帰国して三日目。
やっと時差ぼけが取れた朝。
カーテンの隙間から、
日本のやさしい光が入ってくる。
派手じゃない。
でも、ちゃんと生活の色をしている。
私はコーヒーを淹れて、
ベランダに出た。
遠くで電車の音。
洗濯物の揺れる音。
パリの音楽はもう流れていない。
でも、不思議と寂しくなかった。
私は思った。
恋は終わった。
旅も終わった。
でも、
「自分と一緒に生きる感じ」は、
ちゃんと残っている。
それで十分だ。
私は今日の予定を決めずに、
コーヒーを飲み干した。
静かな朝は、
新しい始まりの顔をしていた。
――おしまい――


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