新着記事

小説

『今日は、ちゃんと呼吸した』

何もしていないのに、疲れる日がある。布団から出ただけで、えらい。シャワーを浴びただけで、十分。そんな日は、だいたい「がんばらなきゃ」という言葉に、心が擦り切れている。窓を少しだけ開けて、空気を入れ替える。それだけで、世界はほんの一ミリやさし...
絵本

『しましまのふくの しまくん』

あるまちの はずれに、ちいさな たんすの いえが ありました。そこに すんでいたのは、あおと しろの しましまのふく。みんなからは「しまくん」と よばれていました。しまくんは じぶんの しましまが だいすきでした。でも、こころの どこかで ...
小説

『日本の朝、カーテン越しの光』

帰国して三日目。やっと時差ぼけが取れた朝。カーテンの隙間から、日本のやさしい光が入ってくる。派手じゃない。でも、ちゃんと生活の色をしている。私はコーヒーを淹れて、ベランダに出た。遠くで電車の音。洗濯物の揺れる音。パリの音楽はもう流れていない...
小説

『帰国前夜、空港カフェ』

スーツケースは、来た時より少し軽い。物は減っていないのに、気持ちだけが置いていかれたみたいだった。空港のカフェは、世界中の「途中の人」でできている。私は窓際でエスプレッソを飲んだ。パリは、何も約束しない街だ。成功もしない。失敗もしない。ただ...