🌱「こころの庭と青いコップ」

絵本

むかし、こころの中に小さな庭を持つ人がいました。

その庭には、やさしさの花がたくさん咲いていました。

その人は、通りかかる人に、青いコップで水を分けてあげていました。

「のどが渇いていませんか?」

そう言って、自分の庭の水をすくって、何度も何度も渡しました。

でもある日、ふと気づくと、

自分のコップは空っぽで、庭の土もカラカラでした。

それでもその人は言いました。

「まだあげられる。きっと大丈夫。」

すると、庭の奥から、年老いた木の番人が現れました。

番人はやさしく首を振って言いました。

「やさしい人ほど、自分の分を忘れてしまう。

でもね、空っぽのコップでは、誰にも水はあげられないんだよ。」

番人はその人の手に、もう一つの小さなコップを渡しました。

「これは“あなた専用”のコップ。

まずここに水を注ぎなさい。」

その人は、はじめて自分の庭の水を、

自分のコップにそっと注ぎました。

すると、不思議なことに、

庭の土がしっとりと潤い、花が少しずつ顔を上げました。

胸の奥が、あたたかくなりました。

その人は気づきました。

「私は、誰かの喉を潤すためだけに生きているんじゃない。

私自身が、うるおっていていいんだ。」

それからその人は、

コップが満ちている日だけ、分けてあげるようになりました。

空っぽの日は、毛布にくるまって、庭を眺めて休みました。

すると庭は、前よりもずっと美しく、静かに、強く育ちました。

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